悠ちゃん義肢プロジェクト経過報告
7月19日 人工ヒレ装着試験&第8回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました!
須磨海浜水族園の大水槽から半自然人工海水池ラグーンへ引越しして1ヶ月が経った7月19日、人工ヒレ装着試験&第8回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました。今回の人工ヒレはこれまでのそれとは少し違い、ヒレに直接装着する装着型から、人工ヒレのヒレ部分と断端部を懸垂する懸垂型へと変更されました。これはこれまでの失敗から、なるべくウミガメに負担ならないようにと考えられた方法です。ボディジャケットを着せられてそこからたくさんのチューブで繋がれ人工ヒレを装着した悠ちゃんでしたが、海に入った瞬間に人工ヒレは外れてしまいました。海の中に入るとヒレ部分に水が含まれて、外れてしまうようです。実験によりボディジャケットとヒレをどうつなぐ(懸垂する)かが大きな課題となりました。会議では、ボディジャケットと人工ヒレのヒレ部分とをつなぐ素材の検討を行いました。(谷口)
6月20日 悠ちゃん神戸空港人工池ラグーンへ引越し&人工ヒレ装着試験開始!
神戸市立須磨海浜水族園で療養中だった悠ちゃんですが、義肢装着試験のため、神戸空港人工池ラグーンへ引越しました!川村義肢チームは昨年の人工ヒレ装着方法を大きく変更し、新しい装着方法の試験を行いました。また、東大チームは昨年に引き続きデータロガーを利用し、遊泳速度データの採取を行いました。試験は装着、脱落、補正の繰り返しで、新しい装着方法にはまだまだ検討が必要そうです。装着試験後には、第9回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行い、今後の人工ヒレの装着方法について話し合われました。悠ちゃんはこのまま海水温が高い夏の間は神戸空港人工池ラグーンで過ごし、人工ヒレ装着試験を行っていくことになります。(谷口)
5月24日 第8回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました!
悠ちゃんが須磨海浜水族園の大水槽に怪我の治療のため引越ししてきて、一ヶ月が経過しました。怪我の具合はというと経過をみながら、治療方法を検討しながらの治療が続いています。そんな中、第8回目の人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました。人工ヒレ開発を行っている川村義肢チームからは、昨年の反省点を踏まえた新しい人工ヒレの装着方法について提案がなされました。また、人工ヒレを装着した際の悠ちゃんの遊泳速度について解析を行った東京大学佐藤チームからは、人工ヒレを装着すれば、外敵から逃げる時のような比較的速い速度を出せる可能性はある。しかし、ウミガメ類が最も生活の中で出している優雅にのろのろ泳ぐような巡行速度となるとそれを保つことができず、むしろ遅い速度になってしまっている。悠ちゃんの幸せのためには巡行速度を健常個体と同じ速度に保てるような人工ヒレが必要だというような報告が行われました。問題点を多く残したまま終わった昨年の会議でしたが、第8回会議では改善点など再確認&議論が行われて、とても有意義な会議となりました。(谷口)
4月24日 悠ちゃん須磨海浜水族園へお引越し!
4月24日冬の間、徳島県日和佐うみがめ博物館カレッタで療養中だった前肢半分を失った悠ちゃんがさらなる前肢の治療のため、神戸市立須磨海浜水族園へ引越ししました。園の大水槽へ移された悠ちゃんは、最初は前肢をうまく動かせずにいましたが、数十分後には不恰好ながらも前肢を動かし泳ぐ姿を確認することができました。ここで海水温が20度前後になる6月中旬頃まで治療に専念し、その後神戸空港人工ラグーンへ引越します。今年も人工ヒレ装着、悠ちゃんプロジェクトがスタートしました!(谷口)
3月17日 第6回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました!
3月17日に第6回人工ヒレ開発プロジェクト会議が行われました。今回の会議では、昨年の経過、現在の飼育状況、人工ヒレ開発経過、昨年負った四肢の傷について話し合われました。川村義肢さんからは、今までとは全く違う第6モデルの義肢を披露していただきました。四肢の傷は、美ら海水族館の植田獣医から昨年の最終装着試験で生じた褥瘡(じょくそう)様のキズの治療が先決であると助言をいただきました。今後、四肢の傷が治り、獣医師のOKがでれば、装着試験を行いたいと思います。
12月5日 今年最後の健康診断と両前肢基部の型取り&日和佐への引っ越しを行いました!
12月5日、神戸空港人工池で今年最後の健康診断と、両前肢基部の型取りを行いました。その後、水温が低下する冬期は人工海水池では生息できないため、悠ちゃんと一緒に保護されていた3匹のウミガメたちは紀伊水道へ放流され、悠ちゃんはその日ラグーンで開催されたウミガメ観察会に参加してくれた子供たちや、ウミガメエコ・ツーリズムに参加されていた神戸市民の方々に暖かく見送られて、徳島県美波町の日和佐うみがめ博物館カレッタへと旅立って行きました。
10月16日 第5回人工ヒレ開発プロジェクト会議を行いました!
悠ちゃんに人工ヒレをつけるプロジェクトの第5回目の会議を行いました。この会議に先立ち、9月12日から10月14日まで、初めて第5号モデルで長期に渡る装着を行い、成功裏に終わることができており、関係者一同、人工ヒレの開発に一応自信をもって望んだ会議でした。ところが、人工ヒレの装着前と後で、悠ちゃんの腕の振りを解析した大阪大学加藤チームからは、人工ヒレをつけると腕の振りが小さくなってしまうとの報告が・・。さらに、東京大学佐藤チームからは、人工ヒレをつけると遊泳スピードも遅くなってしまうというショッキングな報告が行われてしまいました。この原因には次の2つが考えられます。
1 人工ヒレを装着したことにより、腕(前肢)の可動範囲が狭くなり、遊泳力が低下した。
2 前肢を失った悠ちゃんは、前肢に負荷が無くなり、筋力が衰えてしまった。
いずれにせよ、委員会としては、まず遊泳力が上がる人工ヒレを目指すことになりました。初めてのことをやり遂げるのは容易ではないことを、改めて思い知らされた次第です。(亀崎)
9月12日 第3回人工ヒレ装着試験を行いました!
人工ヒレの装着感を確認
関節を確認しながら慎重に装着
再装着して砂浜を歩く悠ちゃん9月12日に3回目の人工ヒレ(第5モデル)の装着試験を行いました。10日に装着された人工ヒレの経過を観察した後、12日午前に阪大チームの方たちに水中での動きを確認してもらいました。その後、取り上げて川村義肢チームが装着感をチェック。一旦ヒレを取り外して前ヒレの傷口部分を確認後、関節の動きを妨げないよう慎重に人工ヒレを再装着。悠ちゃんは人口ヒレにも慣れてきた様子で、前回よりも上手にヒレを使って力強く砂浜を歩いて人工池に戻って行きました。ヒレの装着感を再度観察しながら、次モデルへとつなげていきたいと思います。
9月8日 悠ちゃんに新しい人工ヒレができました!
写真は製作途中の第5モデル6月から試行錯誤している人工ヒレの第5モデルが川村義肢でできあがりました。これまでの試験から次のことが明らかになってます。
(1) 上腕骨基部の部分を硬い材質で被うと、前肢のはばたき行動が正常に行えなくなる。
(2) ヒレの先端が硬いと、運動するときにヒレに振動が起こる。
(3) ベロクロテープは水につけると弱い。
今回の第5モデルは(1)の問題を解決するために上腕で抑える部分を軟らかい素材を使用しました。また、そこにメッシュでヒレをつくり、より弾性のある素材で先端をつくりました。また、固定のベロクロテープは、クラレファスニング株式会社のご厚意で提供された超強力ベロクロテープを用います。装着は10日の夕刻に行い、11日は経過観察、12日には取り上げて問題点を抽出します。12日の午後からは神戸空港西の人工池で一般公開&健康診断も行います。是非お越しください!
7月25日 第2回 人工ヒレの装着試験が行われました!
改良された人工ヒレを装着
柔らかい材質のヒレも装着神戸空港人工池で2回目の人工ヒレの装着試験を実施しました。前回の装着試験結果をもとに、より悠ちゃんにフィットし泳ぎやすいヒレになるようにと、今回は3種類の人工ヒレが用意されました。前回の放送をご覧いただいたクラレファスニング(株)さんから水に強い面ファスナーの提供もあり、装着試験は順調に行われ、悠ちゃんの泳ぐ姿も前回より格段に力強さを感じました。豪雨の中の作業にもかかわらず、頑張っていただいたダイバーの皆さん、プロジェクトのスタッフをはじめ、応援に来ていただいたたくさんの方々に心から感謝いたします!
6月20日 第1回目の人工ヒレの装着試験が行われました!
人工ヒレを慎重に装着
人工ヒレを装着された悠ちゃん神戸空港西の人工池で人工ヒレの装着試験を実施しました。人工浜に応援に来てくれた子供たちや、取材陣に見守られながら人工ヒレを試着、その後遊泳の様子を観察しながらヒレの調整が行われ、初めての人工ヒレ試着は無事に終了しましました。今日一日頑張った悠ちゃんは、子供たちの「悠ちゃんがんばって!」応援コールの中、元気に人工池に帰って行きました。
6月9日 人工ヒレ・モデル1号が出来ました!!
川村義肢の皆さんによって開発が進められている悠ちゃんの人工ヒレができました。このヒレを使ってヒレの材質や装着方法が開発されていきます。20日に初めて装着をしますが、悠ちゃんがどのような反応をするのか、心配でもあり、楽しみでもあります。(亀崎)
5月31日 悠ちゃんが神戸空港人工池に引っ越しました!!
加速度ロガーを装着された悠ちゃん
加速度ロガーの説明をする東京大学海洋研究所の佐藤克文さん
多くの取材陣に見守られる中、神戸空港人工池に・・・悠ちゃんが徳島県美波町の日和佐うみがめ博物館から、神戸空港人工池に運びました。神戸空港では、東京大学海洋研究所の佐藤克文さんらが待機しており、到着後、悠ちゃんの背甲に加速度ロガーと4秒おきにカメの眼前の光景を撮影するカメラを装着しました。これらの装置は6月2日に、自動切り離し装置を作動させ回収され、佐藤さん達に分析していただきます。また、王子動物園の浜夏樹獣医には採血をしていただき、血液分析をしていただいてます。佐藤さん達の宿泊に関しましては、ニチイ学館の伊藤さんにお世話になっておりました。日和佐うみがめ博物館では大変丁寧に飼育していただき、健康な状態で運ぶことができました。博物館の豊崎館長、田中学芸員のお陰です。また、出発の際には赤松小学校の生徒の皆さんが見送りにきてくれていました。川村義肢の川村社長は6月7日に、この小学校に講演にいっていただけるそうです。日和佐の子供達にとっては貴重な経験になることでしょう。皆様、今後ともよろしくお願いします。
悠ちゃんはこの状態で飼育し、6月20日には人工ヒレの取り付け試験を行う予定です。なお、今回は対照とする健常な状態で保護されたウミガメも加速度ロガーとカメラを装着して悠ちゃんと一緒に人工池に放たれました。このアカウミガメは暗に対照的な意味を込めて、照(ショウ)ちゃんと名付けました。当日取材に来られたたくさんのマスコミ関係者の方々やラグーンに遊びに来ていた子供たちに見守られて、悠ちゃん&照ちゃんは元気に人工池を泳いでいました。(亀崎)
4月24日 前肢基部の型の調整作業完了!
悠ちゃんの前肢の型
前肢の型を調整する神田さん悠ちゃんの両前肢基部の型を作成し、その形の調整作業を川村義肢で行いました。今回の作業は主に神田さんが担当されました。前回、4月4日は、日和佐うみがめ博物館で、悠ちゃんの残された前肢の基部の鋳型をとりました。その鋳型の中に石膏を流し込み、悠ちゃんの足と同じ石膏ができあがっていました。今回は、それを、特殊なやすりで削ったり、墨汁を少し入れた石膏をケーキにクリームを塗るようにヘラで盛ったりして、型を整えました。これに基づいて、前肢に装着するソックスのような部分を作成するのだそうです。また、今回は漂着死体の前肢から、本来の前肢の鋳型もとりました。
4月5日 悠ちゃんの性別が判明しました!!
後肢の付け根から内視鏡を差し込み生殖腺を観察し、雌とわかりました。麻酔してます。甲長80cm以下のウミガメの性を外部形態から判別することは難しく、それを明らかにするには内視鏡を腹部に差し込んで、生殖腺が卵巣なのか、精巣なのかを観察します。今回はこの手技のスペシャリストである黒柳賢治氏(当会理事・南知多ビーチランド学芸員)を招待し、判別してもらいました。悠ちゃんはちょっと太っていて、生殖腺まで、内視鏡が届くかどうか心配されましたが、卵巣が確認され、雌と判別されました。
4月5日 義肢作成に先立つ型取り
石膏でとった左前肢の型と悠ちゃん悠ちゃんに義肢を付けるときには、現在残っている前肢にソックスのようにカバーを付けて、それに人工ヒレをとりつけます。川村義肢の川村社長以下3名の手によって、そのソックスの部分をつくるための型をとりました。悠ちゃんは暴れて、作業は難航しましたが、なんとか左右の型をとることができました。
4月5日 運動解析用の画像撮影を行いました
カメを泳がせて、水中の四肢の動きを三次元撮影しました。ウミガメの人工ヒレには、彼らの力強い遊泳にも耐える強度が必要になります。人工ヒレにその強度を持たせるための基礎資料を得るために、前肢の健全な個体を泳がせて、その前肢の運動を解析するための画像を撮影しました。
2009年3月2日
ついにウミガメ義肢プロジェクト(悠ちゃん義肢プロジェクト)始動!
今回、川村義肢本社にてプロジェクトメンバーが集まり、第一回義肢プロジェクト会議をおこないました。
参加していただいたメンバーは義肢製作の川村義肢の技術者、治療のアドバイスをいただく神戸王子動物園の獣医師、悠ちゃんを飼育していただいている日和佐うみがめ博物館カレッタの方々、イルカの人工尾びれプロジェクトをおこなった沖縄美ら海水族館獣医師、肢の動きについて研究をしている大阪大学大学院教授、当会の会長や研究員など多方面の方々です。
今回の会議では、実際の義肢製作案、現在の悠ちゃんの様子、義肢製作に伴う研究の問題点、イルカの人工尾びれ開発プロジェクトについて話し合いをおこないました。それぞれの専門家が、異なった分野間での意見交換をおこない、プロジェクトとしてどのような方向性で活動をおこなっていくのか、また、悠ちゃんがもう一度元気に泳げるようになるにはどうしたらよいのかを真剣に考え合いました。
これから様々な議論を重ねながらプロジェクトを進めていきたいと思います。義肢製作の開始は5月の予定です。本プロジェクトが成功することを祈るばかりです。
会議詳細
これまでの流れ
2008年6月25日に紀伊水道で発見され、神戸空港の人工池に収容された一頭のアカウミガメがいます。
「悠」と名付けられたこのアカウミガメは、発見される直前にサメに襲われたようで、前肢を両方とも食いちぎられており、お腹にもサメの歯形がいくつも付いていました。治療して回復を待ったところ、何とか傷も癒えて一命を取り留めることができました。
11月を過ぎると海水温は20度以下となり、大阪湾に入ってきたアカウミガメは太平洋へと出て行きます。従って、神戸空港でアカウミガメを飼育できるのは12月までです。
12月13日、悠ちゃんと一緒に収容されていた3頭のアカウミガメは、紀伊水道まで運び、放流しましたが、悠ちゃんを放すかどうか迷いました。
ウミガメは広く回遊することが知られており、遊泳力はウミガメにとって非常に重要であると考えられます。悠ちゃんの遊泳速度を測定した結果、両前肢が健常なアカウミガメの約6割しかありませんでした。このままでは再び、サメに襲われても逃げることができません。
我々は悩んだ末に、悠ちゃんを放流せずに飼育することを決め、いつの日か、人間で使用されている義足のような“義肢”をつけてあげることができないかと思い、最近、調査を開始しました。
※なお、悠ちゃんは水温が下がっている冬の間は、徳島県美波町のうみがめ博物館カレッタで飼育していただけることになりました。
我々の調査では、大阪湾や播磨灘は、夏の間、アカウミガメの重要な餌場であることが解ってきました。しかし、そこでの船舶の航行や漁業をみると、彼らにとって安全な餌場である海を、人間は奪ってしまったといっても過言ではありません。大阪湾にやってきたウミガメが傷を負って困っています。なんとか、悠ちゃんを海に返してあげたいものです。皆さんのご協力がいただけたら幸いです。(赤井)

悠ちゃん
両前肢が欠損している悠ちゃん。写真は左前肢。

右前肢
悠ちゃんの右前肢。左よりも右の方が欠損部位が多く、痛々しいです。短くても必死にはばたいて泳ぎます。

健康診断中?
健康診断中の悠ちゃん。月に一回の健康診断は体重や甲羅の長さを測定します。写真は、獣医さんに聴診器を当てられている様子。心音は聞こえるのかな?