活動紹介

事務局だより

久米島におけるアオウミガメの大量捕殺について

2022/7/20

それは不幸な出会いでした
~久米島におけるアオウミガメの大量捕殺について~
 
 近年、アオウミガメの目撃例が増えたとの情報を多く耳にするようになりました。これは、絶滅危惧種としてのウミガメ類全般に対する認知度の高まりによる様々な活動の成果と考えています。
 しかしその一方で、そのアオウミガメが関わる自然環境への影響も散見されるようになりました。例えば、アオウミガメはウミガメ類の中でも植物食性の強い種であり、主な食物は海草・海藻類です。世界自然遺産に登録された西表島では、同じく絶滅危惧種であるウミショウブの群落がアオウミガメの摂食により壊滅的な影響受けていることが報告されていて、その対策は急務となっています。
 沖縄県の漁業現場においても、近年、アオウミガメの目撃例は多く、定置網や刺網漁業におけるアオウミガメの混獲例が頻繁に報告されています。しかし、漁業においては、古来よりアオウミガメを含むウミガメ類は、単なる邪魔者、厄介者ではなく、海神の使いを想起し、感謝の念を捧げ食する海の幸でもあります。
 令和4714日に久米島で発生したアオウミガメの大量捕殺事案については、ウミガメ類の保全に関わる者としてだけでなく、過去にこの島で生活したこともある者として強い衝撃を受けました。自然豊かな離島の風景は美しくのどかではありますが、そこで生活するということは、様々な点において生きる厳しさにも直面します。そうした状況を知るものとして、お聞き頂きたいことがあります。
 今回の事案が起きた久米島は漁業の盛んな島で、沖縄県内でも有数の天然モズクの産地です。これまでは少数の漁業者が天然モズクを適切に漁獲していましたが、3年前からの新型コロナ感染症の影響による経済活動の失速は、地域離島の経済に深刻な影響を及ぼしています。これまでの収入源を失った人々が自然の恵みにその代替えを求めることは地域離島では普通の事であり、今回も豊かな久米島の海に生活の糧を求めた結果、限りのある天然モズクの採取競合が起こりました。同時に、近年のアオウミガメの個体数増加は、ヒト-ヒト間における天然モズクの採取競合にとどまらず、海草・海藻類を摂食するアオウミガメに対しても、天然モズクの競合関係を強く想起させました。それがすべてアオウミガメによるものとは特定できていませんが、近年、目撃が多くなったアオウミガメにその矛先が向くのは想像に易いことです。
 一方、今回、アオウミガメを大量に捕殺してしまった刺網漁業は、基本的に個人で営漁される小規模な漁業です。こうした小規模漁業においては、漁具は貴重な財産で、漁業者はこれを極めて丁寧に扱います。この漁具にウミガメを混獲してしまった場合、漁網の損傷は激しくなります。その為、漁業者は極力丁寧に漁網に絡まったウミガメを外すのが普通ですが、今回の様に多量の、しかも写真を見る限り大型のアオウミガメが一度に混獲してしまった場合、その作業量は甚大な労力として営漁者の負担となります。大きな負担となってもその漁獲物が収入の一部となれば、少しはその重労働も報われるのでしょうが、近年ではウミガメの漁獲は許可が必要であり換金も容易ではありません。加えて、近年のコロナ禍による漁業経営難や資源競合も重なり、その手は極めて重かったことでしょう。
 視点を変えて、アオウミガメの生態面から見ると、本事案が起きた時期はアオウミガメが産卵を開始する時期に相当します。アオウミガメの産卵前の生態については明らかでない部分も多いのですが、産卵前に特定の海域に集群するという知見があります。この集群が今回の混獲ー捕殺事案につながったとするなら、これは極めて不幸な出会いに他なりません。
 地域離島の中で個人の営漁活動は、経済性維持、労働力確保、高齢化などの諸問題を抱えています。そこに直近のコロナ禍が加わった不幸な希少生物の大量捕殺事案は、都市部の方々との感覚とはまた異なる感性と尺度で紐解かねばなりません。これにより本事案のすべてが許容されるものではありませんが、この不幸な出会いが一つの視点のみから論議され、地域離島に住まう人々の感性をも否定される事とはならないように切に願います。
 
日本ウミガメ協議会 副会長 平手 康市
 
 

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今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 当会ではEarthwatchを通じて募集した環境ボランティアさん達と一緒に、ウミガメの調査を行っています。この度、2015年から三菱重工株式会社支援の元で実施している種子島での調査について、三菱重工のウェブサイトで紹介されました。
三菱重工ホームページ(種子島アカウミガメ保全調査)
Facebookページ

 

 
 蔦屋書店さんからお誘いをいただき、年明けの 1月 4日に事務局の地元枚方市でトークイベントを開催しました。当日は、枚方近隣にお住まいの方々にご参加いただき、ウミガメをはじめとした海の生き物についてお話ししました。新型コロナウイルス対策として少人数での開催でしたが、アットホームな雰囲気で、ちょっとした水族館の裏話や子どもたちの素朴な疑問に答えました。また、今回のイベントに合わせて、むろと廃校水族館のぶりくじが初県外出張し、 TSUTAYA牧野高校前店からおよそ 100匹のぶりたちが旅立っていきました。春頃までにはもう一度、枚方市でぶりくじを開催予定です。このご時世ですが、今年は海が見えない枚方でも色々と活動ができればと考えています。 (松宮 )

2020年


 
 1219日~ 20日にオンラインにて、第 31回日本ウミガメ会議オンライン大会を開催いたしました。当初、第 31回は沖縄県での開催を予定しておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の収束はまだまだ見通せず、関係者の皆様の健康面を優先すべきと判断し、やんばる大会は順延、その代替案としてオンライン大会を開催いたしました。今大会は初のオンライン開催ながら、 100名以上の皆様にご参加いただき、画面越しではありますが、皆様とお顔を見ながら情報交換、交流ができたことは、大変嬉しく感謝申し上げます。発表も例年と異なる方法ながら、 6題の口頭発表と 2020年日本のウミガメ状況の報告を行いました。初のオンライン大会は事務局としても不安がありましたが、皆様のご協力もあり、大きなトラブルもなく、とても有意義な大会となりました。懇親会についても、普段話す機会がない方と話す良い機会になったというお声をいただき、オンラインならではの収穫もあったことは事務局としても喜ばしく思います。
 色々と至らない点も多く、ご不便をおかけした部分もあったかと存じますが、皆様のご参加誠にありがとうございました。皆様のご支援ご協力に、心より感謝申し上げます。来年こそは、沖縄県やんばる大会 (国頭村 )で皆様にお会いできることを楽しみにしております! (事務局一同 )

 
  21日に徳島県アカウミガメ上陸・産卵調査報告会を海陽町の阿波海南文化村で開催し、 21回目となる今回は 15名の方にご参加いただきました。徳島県内でのウミガメの上陸産卵は継続的な減少傾向にあり、今年確認された産卵は 10回と昨年よりも減少しました。
 徳島県では、阿南市の蒲生田海岸、美波町の大浜海岸、海陽町の大里松原海岸でウミガメの上陸・産卵が多く、調査の長い歴史があるこれらの海岸を徳島 3大海岸と呼んでいます。しかし、これらの海岸でも年々産卵数が減少傾向にあり、特に産卵成功率(上陸回数に対する産卵回数の割合)が低いことから、砂浜環境の悪化が懸念されています。
 報告会では県内の調査員からそれぞれの砂浜での上陸産卵状況と砂浜環境についての報告があり、その後、当会会長の松沢が他の調査地域の砂浜と徳島県の砂浜を比較して産卵回数が少ない要因について考察しました。また、和歌山や種子島での調査から見えてきたことについて講演を行いました。
 また、日和佐ウミガメ博物館カレッタの田中学芸員から、 3大海岸の 1つである大里松原海岸の現状及び展望についての講演があり、砂浜環境の変化や今後の調査継続の課題について参加者の皆様と考える時間となりました。皆様からのお話しや意見を聞き、地域内での調査後継者の不足や砂浜の環境変化など、考えさせられることが多い会となりました。(松宮)

 当会ではEarthwatchを通じて募集した環境ボランティアさん達と一緒に、ウミガメの調査を行っています。この度、2015年から三菱重工株式会社支援の元で実施している種子島での調査について、三菱重工のウェブサイトで紹介されました。
三菱重工ホームページ(種子島アカウミガメ保全調査)
Facebookページ


  昨年に引き続きEarthwatchのプログラムとして、和歌山県みなべ町千里浜に上陸したメスのアカウミガメ2個体に、GPS機能付きのアルゴス発信機を装着しました。今年はコロナウィルスの影響により、ボランティアの受け入れは残念ながら中止となりました。今後追跡結果を分析し、アカウミガメの移動経路を調査していきます。
 
Earthwatchプログラムとは?:Earthwatchを通じて募集した環境ボランティアさん達と一緒に、ウミガメの調査を行っています。この調査は2015年から三菱重工株式会社支援の元に種子島で、2016年から日本郵船株式会社支援の元にみなべで実施しています。
詳しくはこちらをご覧ください→ Earthwatch公式HP

 
 
 7月中旬から下旬にかけて、講師をしている専門学校の学生たちと、和歌山県みなべ町千里浜でウミガメ調査実習を行いました。夜は現場の調査員たちと協力して砂浜のパトロールを行い、昼にはウミガメについての特別講義や付近の砂浜の痕跡調査、卵の食害を防ぐための防止柵の設置を行いました。ウミガメの産卵を観察できたチームもあれば、残念ながら出会えなかったチームもありましたが、砂浜に残る足跡や砂の中の卵を実際に見て、学校ではできない経験を積み、新たな関心が生まれたのではないかと思います。 (松宮 )

 7月6日に次回のウミガメ会議開催地である沖縄県国頭村で国頭村長と面会し、会議の開催等について打合せを行いました。新型コロナウイルスの感染が拡大している状況のなかで、国頭村としての意向や協議会としての考えを踏まえ、今年の12月に開催予定だった第31回日本ウミガメ会議やんばる大会は、順延することで合意しました。今後、感染の状況などを注視しながら、来年の春には日程を再考予定です。まだまだ先の見えない状況ながら、ぜひ来年は開催したいという嬉しいお言葉を頂戴し、2021年のやんばる大会開催に向けしっかりと準備をしていこうと決意しました。
 なお、今回参加をご検討いただいていた皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解の程どうぞお願いいたします。(松宮)
 


 
 626日より和歌山県みなべ町千里浜において、アカウミガメの上陸産卵状況調査を開始しました。新型コロナウイルスの影響で県をまたいでの移動が自粛されているなかで、今年は例年通りの調査は行えないのではないかと懸念していましたが、 7月から当会調査員と学生ボランティア、地元青年クラブが協力し、例年同様の上陸産卵調査を行っています。今年も、千里ウミガメ館に常駐させていただき毎晩 20時から 4時頃まで砂浜のパトロールを行い、ウミガメ発見時には体サイズの測定や標識装着を行っています。調査初日の 26日には 1頭の上陸を確認し、その後も上陸産卵を確認しています。 1981年から続く千里浜でのアカウミガメの調査を、皆様の協力を得て実施できることが大変ありがたく、今後につながる調査データをしっかりと残していきたいと思います。 (一野 )
 
※例年、みなべ調教育委員会がウミガメの産卵観察申請を受け付けていますが、今年は新型コロナウイルス拡散防止の観点から、産卵観察の受付は行っておりません。

 
 今年も各地からウミガメ情報が聞こえてくるシーズンとなり、6月9日には徳島県の日和佐大浜海岸で県内初産卵が確認されました。 613日には、今年で 21回目となる徳島県アカウミガメ上陸・産卵調査講習会を美波町で開催し、 19名の方にご参加いただきました。
 講習会では、今年度の徳島県内での調査海岸や調査者の確認を行い、各砂浜の今年の状況や昨年の調査頻度の報告がありました。その後、当会会長の松沢が「ウミガメの生態と取り巻く諸問題」についての講義を行い、ウミガメの生態についてと、昨年全国的に少なかった産卵回数についての要因について考察しました。今回が初参加の調査者の方も意見交換していただき、それぞれの砂浜の情報交換やウミガメについて改めて学ぶ有意義な会となりました。 (一野
 
 

 
 温度ロガー設置のため、愛知県赤羽根海岸に行ってきました。ウミガメの産卵期に温度データロガーを砂浜に埋設して砂中温度を自動測定し、秋ごろに回収して設置期間中の温度変化を確認します。これは、環境省からの委託であるモニタリングサイト1000の事業で行っています。砂中の温度を測定することで、産卵から孵化脱出までの期間中にどのような温度の変化があり、またそれが胚発生に影響があるかどうかを調べます。梅雨入り間近ではありますが、これからがウミガメの産卵シーズンです。今年も各地からの報告を楽しみに待ちたいと思います。(一野)
 

 
 2月8日に和歌山県紀宝町で開催された2019年度紀伊半島ウミガメ情報交換会に参加してきました。ウミガメ情報交換会は各地でウミガメの調査をする会員が一年に一度集まり、上陸・産卵・孵化の状況や砂浜の環境についての報告を行い、意見交換をしています。昨年は設立30周年を迎えられ、記念誌の発行に当会も携わらせていただきました。今回の情報交換会も各地から会員が集まり、上陸・産卵数の推移や混獲・ストランディング調査の報告を行いました。各地からの報告後にウミガメ協議会から松宮・平井が全国のアカウミガメの産卵状況や紀伊半島における漂着個体の解剖結果について講演を行いました。紀伊半島だけではありませんが、ウミガメの上陸数が減少し調査する会員のモチベーションが下がる中、次世代への世代交代などの課題がありますが、継続して行われる調査状況の意見交換を行い、苦労を労う報告会の存在は非常に重要であると再確認しました。(平井)
 
 
 2月1日に鹿児島県鹿児島港で開催された第8回九州ウミガメ連絡会に参加してきました。この会は、九州各地からウミガメに携わる方や興味がある方が集まって開催されており、8回目の今回は40名ほどが参加し、活動報告や情報交換・共有を行いました。九州各地から7題の発表があり、それに先立って当会事務局から全国的なウミガメの近況について報告させていただきました。初めて参加しましたが、普段電話やメールでやりとりをしている皆さんと直接お会いして話すことができ、とても有意義な出張となりました。次回は10月31日に宮崎県日向市で開催されます。興味のある方はぜひご参加ください。(松宮)

  新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、希望に満ちた新年をお迎えのことと、心からお慶び申し上げます。併せて、日頃の当会への格別なるご支援、ご協力に厚くお礼申し上げます。おかげさまで日本ウミガメ協議会は昨年30年目を迎えることができました。昨年はウミガメに関する旧来の活動の継続に加え、黒島研究所やむろと廃校水族館の運営など多くの活動を展開させていただくことが出来ました。心より御礼申し上げます。
 昨年は新元号が「令和」になるという歴史的な年になりました。また、相次ぐ企業の不祥事のニュースが目立ちましたが、反面教師と捉え、当会はコンプライアンス違反の無い、風通しの良い職場を目指して日々精進していく所存です。せちがらい世の中になってきておりますが、ワンチームで結束し初心を忘れず邁進して参りますので、引き続きご支援いただきますようお願い申しあげます。
 最後になりましたが、本年も皆さまにとって幸多い年でありますよう祈念いたします。

 日本ウミガメ協議会事務局一同