ウミガメの教科書(上級編)
生活史
ウミガメ類は生涯のほとんど全てを海で過ごしますが、親ガメにとっての産卵と、子ガメにとっての誕生だけは砂浜が舞台となります。砂の中で孵化した子ガメは地表へ脱出すると、大型の捕食者が多い沿岸をいち早く離れ、外洋を漂流する生活を送るようになります。ただし、卵を大きくすることで子ガメが捕食される危険を減らすように進化したヒラタウミガメだけは、生涯を通じて比較的浅い陸棚海域で生活します。
ウミガメをはじめて体系的に研究したフロリダ大学のアーチー・カー博士は、かつてウミガメが外洋で暮らしている間を「mystery of the lost year」と呼びました。私たちは陸上に暮らしているので、広い海へ散ってしまった子ガメを探したり追いかけたりするのはとても難しいのです。ウミガメのこの時期の生態については、一部の例を除き今でもほとんどが謎のままです。
ある程度成長すると、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメの若い個体は、外洋での生活を終えて沿岸や浅い海の特定の範囲の中で暮らすようになります。その後も、季節や成長に応じてすみかを変えていきます。
外洋から戻ってくる時の体の大きさは、概して、タイマイ<アオウミガメ<アカウミガメ、また大西洋<太平洋、という傾向があります。これに対して、オサガメや一部のヒメウミガメでは、繁殖の時期を除き生涯を通じて外洋を放浪して暮らします。成熟した個体は、繁殖期になると普段生活している場所から産卵地へと移動します。その途中で、オスとメスが出会って交尾をします。メスは産卵期に繰り返し何度も同じ砂浜に上陸して産卵します。1シーズン中に9回産卵したという例もあります。産卵間隔は、体の大きなオサガメで短く(9日前後)、ヒメウミガメやケンプヒメウミガメで長くなる(1ヶ月前後)のを除けば、概ね2週間となります。メスは毎年繁殖するとは限りません。ヒメウミガメやケンプヒメウミガメでは1-2年おきに繁殖する個体が多く、他の種では2-3年おきに繁殖する個体が多いようです。オスについてはよく分かっていませんが、おそらく毎年繁殖すると考えられています。
メスの多くは、最初に産卵した砂浜に固執し、他の地域の砂浜に産卵地を変更する例はそう多くありません。ちょうど、このような性質が明らかになってきた頃、既にサケが生まれた川に戻って産卵すること(母川回帰)が分かっていました。そして、サケの回帰に関連させて、ウミガメも生まれた砂浜に戻って産卵するのではないかという仮説(母浜回帰説)が提唱されるようになりました。確かに、ヒメウミガメやケンプヒメウミガメのように特定の産卵地に集団で産卵する例を考えれば、そこは高い確率で生まれた砂浜なのでしょう。また、いくつかの種や個体群では、遺伝子を解析したところ、自分が生まれた地域の砂浜に戻って産卵しているとする証拠が見つかってきました。しかし、「母浜」という語が持つニュアンスの通り、生まれた特定の砂浜にピンポイントで戻っているかどうかまでは確認できていません。
ウミガメをはじめて体系的に研究したフロリダ大学のアーチー・カー博士は、かつてウミガメが外洋で暮らしている間を「mystery of the lost year」と呼びました。私たちは陸上に暮らしているので、広い海へ散ってしまった子ガメを探したり追いかけたりするのはとても難しいのです。ウミガメのこの時期の生態については、一部の例を除き今でもほとんどが謎のままです。
ある程度成長すると、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメの若い個体は、外洋での生活を終えて沿岸や浅い海の特定の範囲の中で暮らすようになります。その後も、季節や成長に応じてすみかを変えていきます。
外洋から戻ってくる時の体の大きさは、概して、タイマイ<アオウミガメ<アカウミガメ、また大西洋<太平洋、という傾向があります。これに対して、オサガメや一部のヒメウミガメでは、繁殖の時期を除き生涯を通じて外洋を放浪して暮らします。成熟した個体は、繁殖期になると普段生活している場所から産卵地へと移動します。その途中で、オスとメスが出会って交尾をします。メスは産卵期に繰り返し何度も同じ砂浜に上陸して産卵します。1シーズン中に9回産卵したという例もあります。産卵間隔は、体の大きなオサガメで短く(9日前後)、ヒメウミガメやケンプヒメウミガメで長くなる(1ヶ月前後)のを除けば、概ね2週間となります。メスは毎年繁殖するとは限りません。ヒメウミガメやケンプヒメウミガメでは1-2年おきに繁殖する個体が多く、他の種では2-3年おきに繁殖する個体が多いようです。オスについてはよく分かっていませんが、おそらく毎年繁殖すると考えられています。
アオウミガメの上陸産卵