ウミガメについて知りたい

ウミガメの教科書(初級編)

産卵地について

 八重山

八重山諸島は、石垣島、西表島、黒島など約10の島々から成り立っています。産卵が見られるのは、黒島、西表島、石垣島、新城島、波照間島などの外洋に面した砂浜です。この地域ではアカウミガメ、タイマイ、アオウミガメの3種のウミガメの産卵が確認されています。黒島には日本ウミガメ協議会付属黒島研究所があり、1973年より近海のウミガメの調査を続けています。

座間味

小規模な砂浜が多数あり、北側の砂浜を中心にウミガメの産卵が確認されています。ニタ浜は日本におけるアオウミガメの主要な産卵地の一つとして知られています。

沖縄

国頭村や大宜味村など北部の海岸での産卵が比較的多いようですが、中部の読谷村、恩納村、南部糸満の大度海岸の産卵も有名です。北部の海岸線は、海岸に出来た漁港などによって漂砂が変化し、年々砂浜の様子は悪化しています。

沖永良部

アカウミガメとアオウミガメの産卵が多くみられます。2006年から10年ほどは年に400回ほどの産卵がありましたが、近年は200回ほどにまで減少しています。沖永良部ウミガメネットワークによって調査が継続されています。

奄美

奄美大島やその南の加計呂麻島等の周辺の砂浜でも、アカウミガメとアオウミガメ、タイマイの産卵が見られます。また、奄美大島の喜徳浜では日本で初めてのオサガメの産卵が確認されました。奄美海洋生物研究会によって調査が進められています。

種子島

種子島で最も産卵が多い長浜海岸は海岸構造物のほとんどない、自然に恵まれた砂浜です。種子島は潮が満ちると消失してしまう海岸線が多いですが、杭や植樹による飛砂対策が行われ、コンクリートによる浸食防止策が行われているところは少ないです。

屋久島

永田の前浜と田舎浜にアカウミガメの産卵が集中しています。日本で確認されるアカウミガメの産卵の約半分がこの二つの浜で行われます。ここでは、屋久島うみがめ館によって1985年より、調査が行われてきてます。


吹上

加世田市、吹上町、日吉町、金峰町などの自治体によって卵の保護活動が行われているほか、鹿児島大学ウミガメ研究会が産卵に関する調査研究を行っています。北部の砂の流出が激しく、産卵適地は北のほうから減少しています。また、万之瀬川より南は、産卵が少なく、沖合いの地形が原因だと考えられています。

長崎・佐賀

リアス式海岸にいくつかの小さな浜が点在し、毎年、数回の産卵が記録されています。

宮崎

延岡、高鍋から宮崎にかけての海岸線、日南に主要な産卵場があり、宮崎野生動物研究会が調査を行っています。宮崎野生動物研究会は1970年代からの調査実績があり、食卵習慣をなくしたり、浜の保全策に様々な意見を出したりして、本質的な保護活動を実施している団体です。


高知

高知県の海岸線は比較的多くの砂浜が存在しており、そのいずれの場所でも数は多くはありませんがアカウミガメが産卵します。調査が行われているのは、土佐清水市の平野海岸、高知市の春野海岸、室戸市の元海岸などです。ウミガメ協議会は室戸に調査基地を設け、その付近に回遊するウミガメの生態を研究しています。


アカウミガメの産卵に関する調査では、最も歴史のある土地です。日和佐町大浜海岸、阿南市蒲生田海岸では、地元の中学生や小学生の手によって、1950年代からウミガメの上陸回数が数えられるようになり、現在に至っています。日和佐町にはうみがめ博物館カレッタも設けられています。1998年よりウミガメ調査ボランティアを募り、一斉調査に乗り出しています。


明石

明石市の砂浜はかつてはウミガメの産卵場として知られていましたが、沖合いの砂採取の影響で砂浜の砂が減少し、陸域の保護を目的とする人工砂浜の建設が行われてきました。その後、その浜でのアカウミガメの産卵が見られるようになり、国土交通省、明石市、地元住民の中で保護活動が始まりました。人工砂浜は年月がたつと固化するなど、新たな問題点も明らかになりました。2008年には松江海岸で3年振りにアカウミガメの産卵が確認されました。


大阪湾

大阪湾のような内湾(閉鎖性海域)でも、わずかながらですが産卵が確認されてきました。近年では大阪府泉南市の人工砂浜で産卵が偶発的に確認されるに過ぎませんでした。しかし2002年に淡路島の洲本市の人工砂浜で産卵が確認され、2003年には近隣の無人島での産卵が、地元住民と日本ウミガメ協議会との調査で確認されるようになりました。


和歌山

和歌山県には千里海岸よりは少ないもののウミガメの産卵する浜がいくつもあります。新宮市海ガメを保護する会、玉の浦リップルズクラブ、串本海中公園センター、エビとカニの水族館が調査・保護活動を展開しています。また、和歌山県のこれら団体は、紀伊半島ウミガメ情報交換会を作り相互の情報交換を行っています。


みなべ

和歌山県みなべ町の千里海岸では1985年から、みなべ町教育委員会ウミガメ研究班と元小学校教頭の後藤清さんによって調査が継続されてきました。産卵シーズンには日本ウミガメ協議会もその手伝いに出かけます。1990年代には京都大学農学部坂本亘研究室の大学院生が多くの研究成果を出した場所です。


三重県

志摩半島を中心にいくつも産卵海岸があります。志摩半島野生動物研究会と三重大学のかめっぷりというサークルが、積極的な活動を展開しています。

知多半島

知多半島には海水浴場が多くありますが、ここでも稀にアカウミガメが産卵します。南知多ビーチランドが中心になって周辺の情報を集積しています。


渥美半島

渥美半島の先端の伊良湖岬から豊橋市にかけての太平洋岸の砂浜は表浜と呼ばれています。渥美町、あかばね塾、豊橋市などが調査しています。ここの大きな問題も砂の侵食で、赤羽根港の導流堤の工事によって砂がその付近に多く堆積したため、周辺海岸の砂が減少する傾向がみられます。

静岡

西端の湖西市から御前崎にかけての遠州灘海岸では、御前崎市ウミガメ保護監視委員会、静岡県環境局、浜松市南区役所によって、保護活動が続けられています。国の天然記念物として地域指定されている御前崎では、付近の港湾整備が原因と考えられる砂の減少で、かつての砂浜の大部分が消失し、産卵された卵はすべて孵化場に移植されています。また、サンクチュアリジャパンは孵化した子ガメで放流会を実施しています。

伊豆諸島

伊豆大島、三宅島ではわずかですがアカウミガメの産卵が見られます。それぞれ、みどりの地球大好き会、三宅島自然ガイドキュルルが情報の集積を行っています。

小笠原

小笠原諸島は父島群島、母島群島ともに日本最大のアオウミガメの産卵地です。ここでのウミガメの生態は財団法人東京都海洋環境保全協会小笠原海洋センターによって行われてきましたが、財団法人の閉鎖にともなって運営は日本ウミガメ協議会、のちにエバーラスティングネイチャーに引き継がれ、現在に至ります。

千葉・茨城県

千葉県房総半島から茨城県にかけての海岸線は太平洋のアカウミガメの産卵場の北限にあたる場所です。鴨川シーワールドやアクアワールド大洗などの水族館の他、一宮ウミガメを見守る会などの自然保護団体が情報の集積や保護活動にあたってます。