ウミガメの教科書(上級編)
孵化と脱出
タイマイ孵化幼体の脱出
砂の中に産み落とされた卵から、早ければ産卵後40日あまり、遅くても80日ほどで子ガメが孵化します。孵化直前の卵の中で、半分は子ガメが占めていますが、残りの半分は羊水や老廃物を含む水分です。子ガメが卵の殻を破って外に出るときに、この水分は下へこぼれ、卵の殻は潰れてしまうので、巣穴の中には余分な空間ができます。この空間の中で、残りの卵黄を吸収し終えた子ガメが動きだすと、それが刺激になって他の卵からも次々と孵化します。子ガメ達の動きが大きくなると天井の砂が徐々に崩れ落ちます。その中を這い上がり、また天井の砂が崩れる、といった行程を繰り返し、子ガメ達は兄弟力を合わせて40~50cm上の地表を目指します。
地表へ向かった子ガメは、闇雲に掘り進むわけではありません。多くの場合は、10cmほどの深さまで到達すると一旦そこで待機して夜になるのを待ちます。昼間は目がよく利く大型の捕食者が空からも海からも子ガメを狙っていますし、仮に捕食者が居なくても、暑さのために死んでしまうからです。昼間でも激しく雨が降った後などには脱出することがあることから、子ガメは温度の低下を砂が冷えてきたのを手掛かりに脱出のタイミングを見計らっていると考えられています。