ウミガメの教科書(上級編)
形態・解剖
アオウミガメ
ヒョウモンガメ
ウミガメは海に適応した結果、陸で暮らす他のカメに比べて様々な点で異なっています。まず、最も明らかなのは四肢の形の違いです。上のリクガメの写真を見ても分かるように、陸で生活するカメの足は指があり、陸を歩きやすいようになっているのに対し、ウミガメの足は舟のカイのような形をしています。もちろん、これは海中を自由に泳ぐために発達させたものです。しかし、そのかわりメスが産卵の際、砂浜を歩くのは大変になってしまいました。
また、カメ類の最も大きな特徴はドーム型をした頑丈な甲羅を持ち、危険に応じて頭や手足を甲羅の中に引っ込めることですが、ウミガメは頭やヒレ状になった四肢を引っ込めることは出来なくなりました。ドーム型で頑丈な甲羅を背負っていては水の抵抗が大きいため、 海の中では速く泳げません。そこで、ウミガメは甲羅を出来るだけ薄く、小さく、滑らかに変化させました。その結果、カメ特有の防御ができなくなったのです。手足を引っ込めるよりも、素早く逃げる方を選択したというわけです。
アオウミガメの骨格標本
カメの甲羅は、骨甲板とその上の角質甲板の二重構造になっていて、背中側の背甲とお腹側の腹甲からなります。骨甲板は脊椎骨や肋骨と一体化しています。リクガメでは隣り合う骨甲板同士は隙間無く頑丈に繋ぎ合わさりますが、ウミガメ類の場合は隙間だらけになっています。オサガメに至っては隣り合う骨甲板同士が接合することはありません。また、オサガメの場合には、角質甲板はなく、甲羅は薄い皮膚で被われています。オサガメを除くウミガメ類では、甲羅の上の角質甲板を含めて、体の表面は角質化した鱗、すなわち鱗板が被っていて、主要なものにはそれぞれ名称があります。鱗板のうち、前額板、下顎鱗板、肋甲板、亜縁甲板などは、ウミガメの種を同定するうえで決め手となる形質の一つです。