ウミガメについて知りたい

ウミガメの教科書(上級編)

 

産卵行動

 一般的に上陸したメスの行動は、上陸、ボディーピット、穴掘、産卵、穴埋、カモフラージュ、帰海の7つのフェーズからなり、途中で失敗がなければこの順に行われます。上陸は、波打ち際に姿を現してからボディーピットを始めるまでを指します。
 ボディーピットとは穴掘に先立ち、体が隠れる程度の穴を掘る行動で、アカウミガメ、ヒラタウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメでは比較的浅く、アオウミガメ、オサガメでは、体が埋まるほど深い穴を作ります。穴掘は後肢を左右交互に使って洋なし型の卵室を掘る行為で、脚が届かなくなるほど穴が深くなると、引き続き産卵が始まります。種によって異なりますが、1回の産卵で、ざっと100-130個の卵を産みます(例外的にヒラタウミガメは50-55個程度です)。産卵が終わると穴埋が始まり、後肢を使って卵室を埋めていきます。引き続き前肢も使って前方の砂を後ろへ掃き飛ばし、ボディーピットを埋めていきます。いわゆるカモフラージュです。そして、海へと戻っていきます。一連の行動は早くても1時間を要します。

 ウミガメが砂浜に上陸すると特徴的な足跡が残ることはよく知られていますが、歩き方や足跡が種ごとに異なることは御存知でしょうか。アカウミガメやタイマイでは左右の前脚を交互に動かしてホフクするのに対して、体が大きなアオウミガメやオサガメでは左右の前脚を揃えて動かして進みます。ちなみにオサガメは子ガメの時から左右同時ですが、アオウミガメは子ガメの時には左右交互に動かすのです。これは、体がある程度大きくなると、両脚同時に踏ん張らないと動かないからだと考えられています。
 

ウミガメ3種の足跡
「ウミガメは減っているか(改訂版)」より


 このように特徴的な足跡を残しながら、ウミガメはより高い位置へと上がっていきます。通常は植生帯や護岸などの障害物に当たるまで進み、そこでようやくボディーピットを始めます。必然的に産卵巣は植生帯付近に集中することになります。植生がない護岸むき出しのところではよく護岸に沿って亀が右往左往し、植生も護岸もない場合には浜の表面が凸凹になるところまで上がっていくことが多いようです。平らな部分は波に洗われているということで、卵が冠水したり流されたりする危険が高いのに対して、植物が生えていたり他の個体のボディーピットが残っているようなところは安全というわけです。